marimbaマリンバについて

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マリンバとその親戚たち 中村とうよう(音楽評論家)

 マリンバは「旋律を持つ打楽器」です。一般に打楽器には、リズムだけあって旋律(メロディー)はないのが普通なのですが、リズムと同時にメロディーをかなでる打楽器、という点がマリンバのすばらしい特徴です。
細長い木の板(音板という)をたたくことでリズムを作り、低い音や高い音を混ぜることでメロディーを作る。こういう楽器はいろいろありますが、「木琴」というのがいちばん一般的な呼び名です。英語では「シロホン」(正確に発音すればザイロフォン)と言います。

その音板の1枚1枚に金属のパイプが付いているのが「マリンバ」です。横に並んだ音板の下に、パイプが1本ずつタテにブラ下がっていて、音がパイプに共鳴して柔らかく豊かな響きとなります。そこがマリンバの魅力です。さらに、音板が木製ではなく金属製で、しかも共鳴を大きくするためにパイプに小さなファン(電気モーターで回転する)が付いているのが「ビブラホン」(ヴァイブラフォン、略してヴァイブ)で、これはジャズなどでよく使われます。マリンバやヴァイブは、木琴の親戚と言えるわけです。
 木琴の親戚筋に当たる楽器は、世界中に広まっています。木琴が小学校でよく使われるから世界に広まった、という意味ではありません。学校で教えるとかに関係なく、世界の各地で、民族の楽器としてむかしから根づいてきました。
 インドネシアにはガムラン音楽というものがあります。世界のさまざまな民族がそれぞれ持っている伝統的な音楽のなかでも、インドネシアのジャワ島やバリ島のガムラン音楽は、独特なサウンドで古くから知られています。
(中略)
 このような木琴の一族と言える「旋律を持つ打楽器」がいちばん最初にどこで生まれたか、については、まだわかっていません。ただ、インドネシアには、竹、もしくは木の長さの違う棒を並べたような浮き彫りが古い遺跡に残っていたりするので、インドネシアを含めた東南アジアのどこかで生まれ、それが、インド洋を渡ってマダガスカル島を経て、東アフリカ→西アフリカ→大西洋→アメリカ大陸と世界に広がっていったと考えて、間違いないと思われます。
 アフリカに伝わった木琴の類はそこから独自の発展をし、さらにアメリカ大陸に伝わってメキシコなどで今も盛んに演奏されています。
 アフリカでもアメリカ大陸でも、単なる木琴ではなく、共鳴装置の付いたマリンバの形になっていて、マリンバという名前も東アフリカの言葉だったのが、そのままメキシコなどでも使われるようになっています。

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 弦楽器にしても管楽器にしても、楽器というものの歴史を調べてみると、長い歴史のなかで驚くほど遠くに伝わり、興味深い変化をしてきていることが多いのですが、マリンバはその代表格です。たっぷり時間をかけて世界に広まったマリンバには、世界の多くの人々の思いがこめられています。リズムとメロディーを調和させるマリンバ独特の力が、人々の気持ちを汲み取り、さらにサウンドを豊かにしてきたのではないでしょうか。そんなマリンバの魅力を、もっともっと多くの方に味わっていただきたいと思います。